介護コラム

介護の職場のリーダーが知っておきたい一つの秘訣

先日、とある老健に勤める理学療法士の方から相談メッセージが届きました。

この方は臨床経験が10年以上あるベテランですが、今年から初めて介護施設で働くことになりました。今までとは異なるやり甲斐を感じたり新たな発見をしたりしながら、利用者さんや職員のために毎日とても努力されております。

そして、いただいた相談メッセージがこちらです。(※一部改変し、ご本人の承諾を得て記載しております。)

先日、各部署の所属長が集まる連絡会議に参加したのですが、話題の根底に、自分の所は人手不足で忙しい。他の部署は楽をしているのではないか?といった意識があるようで議論が進まず、言い方にも棘のある印象でした。

現状では、どこの部署も皆一生懸命やっているはずなんですが。
自分たちだけが頑張っているというか被害妄想??

正直、他の部署を尊重する気持ちが感じられませんでした。

私は◯曜日だとフリーで動ける時間があるので、早速ユニットにヘルプに入ってみて、まずは介護職員の大変さを体験してみようと思います。

他に何か良い方法はありますでしょうか?

他職種の大変さを身をもって経験してみようと、実際に行動に移せる療法士は多くないなか、とても素晴らしい行動力だと思います。

私自身も同じような経験があって、おかげで視点が高まり、視野も広がりました。この方にはこれから職場全体のリーダーとなって頑張って欲しいし、もちろん応援をさせていただきたいと思っております。

本当に議論が必要な職場の問題はなにか

この理学療法士の方は私へ「他部署が困っているから自分の出来る事で応援したい。もっとみんなの役に立てる良い方法はありませんか?」という意味でご相談されました。

でも私が注目したのは別の所。それは、人手不足という一つの問題点がきっかけで感情的になり、議論すべき話題から他部署の非難へ飛び火してしまっているところです。

これでは会議の進行は無理です。それでこの方が火消し役になろうとお考えになられたのだと思います。

あなたはこのような経験はありませんか?

何か作業に没頭していて、例えば腕から血を流すケガをしているにも関わらず、痛みを感じないで作業を続けていた。ふと腕のケガに気付いた時に初めて痛みを感じた、といった経験。または運動会などの駆けっこで、途中で転んでケガをしたが、走っているときは感じなかった痛みが走り終えてからジンジンと痛み出した、などです。

きっと、最初からケガを認識していたら痛みを感じていたでしょうし、その部位をかばう動作をしたでしょう。でもケガを認識してなかったから、目的の行動に注力できたのです。

今回相談されたこの方の職場でも同じようなことがいえます。人手不足という痛みにばかり集中してしまい、議論するべき話題から逸れてしまっているのです。しかも部署同士の仲を険悪にするというオマケ付きです。こうなるともう、議論は前進しません。どこの職場でもある事例ではないでしょうか。

真の問題解決ができるリーダーへ

今回は、職場のリーダーであるあなたへ、悩んでいる問題点を解決する秘訣を一つお伝えしようと思います。

それは、その問題点にこだわらないということです。

一つの問題にこだわると、余計に泥沼にハマるケースも少なくありません。もし簡単に解決しそうにない場合、その問題より向こうにゴールをきちんと設定する必要があります。そして、職員には問題点に注意を向けさせるのではなく、ゴールに注意を向けさせてください。

そうすると、ゴールに到達するための計画や行動が始まります。あんなに悩んでいた問題点が、きっとただの通過点になると思いますよ。

例えば、私に届いた相談メッセージにあった連絡会議でいえば、「人手不足」を理由に「他部署批判」となり、「議論が進まない」となったわけですが、会議の途中で人手不足へ問題点がすり替わっても、それを連絡会議で今解決できるわけがないです。もっと上のレベルの会議の話です。結局、話し合いに感情が入ってくると解決は困難となりますし、貴重な時間も労力も無駄となってしまいます。

この場合のゴールは、この連絡会議が予定していた議題の解決を時間内にキッチリ終えることですから、リーダーはそのゴールに到達するための方法を考え、参加者をそちらに注意を向かせなければなりません。

そんなことかと思われた方もいらっしゃるでしょう。でも、介護業界にはお話好きな人が多いようですから、そうした方が会議に入ってしまうと… なかなか難しいものです。このような経験、ありませんか?不平不満の多い職場においては、特によくみられるケースかと思います。

この問題点にこだわらないという方法は、私はよく使います。職員の皆さんが通過点で立ち止まることのないように、あなたが是非ゴールへ導いてあげてくださいね。

この相談メッセージからは他にも読み取れることがありましたので、それはまた次回に。

ABOUT ME
武藤竜也
作業療法士。他業種から作業療法士へ転向し、臨床経験5年目で老健副施設長に就任する。介護業界の常識に真っ向から異論を唱え、当時の施設スタッフ全員で力を合わせて機械浴の完全廃止を達成。自ら設計したひのき風呂浴室を使った個浴ケアを通して、寝たきりのご利用者にも人として当たり前のお風呂を提供する。現在はフリーランスとなり、医療介護施設ケアアドバイザーとしての活動と、医療福祉業界専門パソコンサポーター むとうドットコムの経営をし、医療介護施設のケアの質向上やリハビリ・介護の仕事の楽しさを伝えている。