「急に怒鳴られて、とまどった…」など、認知症の方の対応で困ったことはありませんか?さまざまな症状がある認知症。症状によっては、どう接するべきか悩みますよね。

「いま、悩んでいる症状がある!」という方は、下記の中の悩みの種のシーンを参考にしてもらえればと思います。
認知症の対応について全般的に悩んでいる方や、認知症の症状に関わる前の予備知識として得たい方にも、ぜひ読んでいただきたい、認知症対応の基本と対応マニュアル、経験談をご紹介します。

認知症対応の基本

まずは、認知症の方の基本的な対応方法をお伝えします。

魔法みたいな認知症ケア、ユマニチュードとは?

ユマニチュードをご存知でしょうか。
見つめる、話しかける、触れる、立つの4つのコミュニケーションから成る認知症ケアの手法です。

  • 見つめる:見つめることで、言葉よりはやく「私はあなたの味方です」と伝えられます。
  • 話しかける:実況するようにゆっくり声かけすることで、「作業」ではなく心の通った「ケア」になります。
  • 触れる:優しく声をかけながら、そっと触れることで、安心感を与えます。
  • 立つ:立つことで、筋力の維持向上や骨粗しょう症の防止など身体機能を保つ効果があります。寝ていると、孤独に感じて自分だけの世界に浸りがちになってしまいます。立つことによって、他の人と同じ空間にいると認識し、自分だけの世界から抜け出して活動的に行動することへの一歩につながります。

認知症の症状によって暴力的な方が穏やかになったなどの効果を発揮しているユマニチュード。それゆえに、魔法みたいなケアと言われています。
詳しくはこちらをご参照ください。
認知症online:暴言が消えた!魔法みたいな認知症ケア「ユマニチュード」って?

否定せずに、共感して傾聴する

認知症の方は何度も同じ質問をすることがあります。本人とっては毎回「はじめて聞くこと」です。
何度同じことを聞かれても、「うそをつかない」「ごまかなさい」共感と傾聴の姿勢が、信頼関係を深めることにつながります。認知症の方の中には「言葉」が「記号」のように感じる人もいます。言葉を理解していなくても、自分の話を「聞いてくれる人」「聞いてくれない人」の理解はしているため、傾聴の姿勢はとても大切です。
「共感」と「傾聴」のバリデーション療法については、こちらをご参照ください。
認知症online:『共感』と『傾聴』の認知症ケア「バリデーション療法」って?

こんなときはどうすればいいの?困ったときの認知症対応マニュアル

基本的な対応のあとは「こんなときはどうすればいいの?」に答える、具体的な対応方法をご紹介します。

症状①:現実にはないもの(人物や動物)が見えると訴えられたときは?(幻覚症状)

対応

●私たちには見えていなくても、本人にとっては見えています。
「そんなものはいない」などの否定はせずに、「あの人(物)は悪さをしないから大丈夫ですよ」など安心できるような声かけをしましょう。
●歌を歌ってもらったり、視線を変えてもらったりして、注意をそらすことも効果的です。

対策

●不安や恐怖をあおるような環境(壁のシミなど)の場合は、改善をしましょう。

 

症状②:財布や物を盗られたと騒がれたときは?(物盗られ妄想)

対応

●間違いを正そうとして本人を否定すると、かえって興奮させてしまいます。盗られたものを一緒に探して、共感を示しましょう。

対策

●何もすることがないと、妄想の症状が出やすくなってしまいます。日中の過ごし方を改善し、症状が出ないような環境づくりをしましょう。
●眼鏡の度数や補聴器のサイズがあっていない場合に、妄想の症状が出ている可能性があります。本人にあった眼鏡や補聴器を使用しましょう。

 

症状③:入浴などの介護に対して拒否を示したり、叩いたり、悪口を言ったりするなど攻撃的になったときは?(拒否症状)

対応

●無理やり抑えつけようとすると、拒否症状が悪化してしまう可能性があります。無理強いせずに、好きな音楽を流すなど、落ち着ける環境を提供しましょう。
●何をされるかわからなくて不安になったり、服を脱ぐことに抵抗があったりする方もいます。わかりやすい言葉を使って、ゆっくりと穏やかな対応をすることで、安心感を与えましょう。
●体調が優れないために拒否が出ている可能性もあります。本人をよく観察し、具合が悪くないかどうかを尋ねてみましょう。

対策

●不快な刺激(室温や照明、騒音など)がある場合は、環境を改善しましょう。

症状④:食事の直後に「ごはんは?」と催促したときは?(記憶障害)

対応

●「さっきたべたばかりでしょ」などと否定せずに、わかりやすい言葉で食事を済ませたことを伝えます。
次の食事の時間や支度中であると伝えることで、納得してもらえることもあります。
●認知症が進むと、脳の機能低下により満腹感を得られなくなることもあります。食事をしたことを忘れてしまって本人が我慢できない場合は、おやつを少量渡してみましょう。

対策

●食事の量をあらかじめ減らしておき、残りをおにぎりにして食事の回数を増やすことや、食べたお皿をあえて片付けないでおくことも効果的です。

 

症状⑤:目的もなく、外をうろうろと歩き回りたがるときは?(徘徊症状)

対応

●「出ちゃダメ」などの否定の言葉ではなく、他のことに関心が向くような声かけをし、外出を思い止まらせましょう。
●どうしても外を出歩きたい場合は、可能であれば一緒について歩きましょう。

対策

●室内が暑すぎたり、明るすぎたりと不快な環境である可能性があるので、改善をしましょう。
●ご近所や交番などの地域の方に、1人で出歩いているところを見かけたら知らせてもらうように協力をお願いしておきましょう。

症状⑥:夜間眠れないときが続き、興奮したときは?(夜間せん妄症状)

対応

●夜中を昼間だと勘違いしている場合は、今が夜中であることを伝え、温かいお茶などを提供して「そろそろ寝ましょう」と促しましょう。

対策

●昼間の居眠りや運動不足が原因になっていることもあるので、日中に運動や日光浴を促すといいでしょう。
●現状が不快な環境である可能性があるので、快適な寝具を用意するなど、環境の改善をしましょう。
●体調が優れないことが原因の可能性もあります。脱水や栄養不足になっていないか、薬物投与が過多になりすぎていないかを検討し、医師に相談しましょう。

症状⑦:おもらししてしまったときは?(失禁)

対応

●排泄の失敗は、本人にとってショックなことです。本人の気持ちを傷つけないように、叱責や大げさな反応はせず、速やかに片付けましょう。

対策

●トイレの場所がわからない場合は、ドアに「トイレ」と書いた張り紙をするなどの工夫をしましょう。
●リハパンやパットを活用したり、部屋にポータブルトイレを置いたりして、安心できる環境づくりをしましょう。

症状⑧:便を手に持っていじってしまうときは?(不潔行為)

対応

●発見したときは不潔に感じて焦ってしまいがちですが、「汚い!」などの叱責はせずに、速やかに排泄物を片付けて、本人の気持ちを落ち着かせるようにぬるま湯で洗いましょう。すぐにおむつを交換して、清潔にしましょう。

対策

●便が不快なために自分で取り除こうとしたり、失禁の後始末がわからなかったりして、このような行為をします。本人の排泄パターンを知り、決まった時間にトイレに行く習慣をつけてもらいましょう。
●本人の爪を短く切ったり、こまめに手洗いをしたり、身の回りを清潔に保ちましょう。

わたしの困った経験談

現場ではどのような苦労があるのでしょうか。認知症の方との関わりの一部をご紹介します。

経験談1:次から次へと同じものを買ってしまって、ごみ屋敷にしたおばあさん

訪問介護のヘルパーとして働いていたときのことです。
重度の認知症のおばあさんがいました。おばあさんは、何度訪問しても私のことはわかりません。サービス内容は、ごみ捨てとごみまとめです。
そのおばあさんの家はとても広くて立派なおうちでした。
そう、過去形です。
おばあさんは、必要のない食べ物や衣類をいくつも買ってきてしまい、足の踏み場もないくらいのごみ屋敷にしてしまいました。
立派なおうちなのに、もったいないなーと心の中でつぶやきながら、おばあさんといっしょにもくもくとごみをまとめます。ほとんどの食べ物が腐っていたり、虫がわいていたりしていて、すぐに捨てても支障はないと思いましたが、ひとつひとつおばあさんに確認をとります。
本人のものですので、きちんと許可をもらい、本人に判断してもらいます。もちろん、捨てるように促しましたが。
業者を入れて一気に片付けたいところですが、本人の意向がありますので、ヘルパーの力を借りて少しずつごみを捨てました。
地道にごみを捨てる忍耐力と虫とカビへの耐性が必要なサービスでした。

経験談2:刑事ドラマをみて妄想が!ヘルパーを犯人だと思い込むおばあさん

訪問介護で出会った認知症のおばあさんのことです。
こちらも重度の認知症のおばあさんで、何度訪問しても、認識はしてもらえません。サービス内容は食事介助と排泄介助でした。
訪問すると、おばあさんはベッドの上から刑事ドラマを眺めています。ベッドから車いすへ移乗し、おばあさんにエプロンをつけて、食事を配膳します。食事の準備ができても、おばあさんはボーっとテレビを眺めています。
声かけをしながら食事介助をはじめます。すると、急に「あなたも仲間なの?」と言われました。
「え、え、なんのこと?」と思ったら、ちょうど犯人と接触しているシーンがテレビで流れていました。
おばあさんは私のことを刑事ドラマの犯人の仲間だと思ったようです。
「わたしはちがいますよ~、ヘルパーですよ~。」
そう言って、納得してもらえるときもあれば、怪訝な顔をされ、不穏な状態のままのときもあります。不穏なときは、ご飯も食べてくれず、トイレも嫌がりますので、とても大変です。
テレビ番組がダメだ!と思い、訪問したらすぐに穏やかな番組へとチャンネルを切り替えることにしました。
番組の工夫をしてからは、妄想や不穏がなくなり、スムーズに介助ができるようになりました。

2025年には、65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症

厚生労働省は、2025年には認知症患者が700万人を超えると発表しました。65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症患者という計算になります。2012年の時点での認知症患者の人数は、462万人と推計されています。
上記のことから、認知症の方は年々増えてきており、珍しい病気ではないことがわかります。

認知症の方が増えることで、対応に悩む方も増えるのではないでしょうか。認知症の対応について悩む方が少しでも減ることと、認知症の方にとってより生活しやすい環境になることを願っています。

 

参考サイト

厚生労働省「認知症施策推進総合戦略」(2017年5月16日,http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/nop1-2_3.pdf)

葛飾区医師会版「『認知症家族・介護者』のための認知症・BPSD介護マニュアル」(2017年5月16日,http://www.katsushika-med.or.jp/BPSD_manual.pdf)

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