介護の知識

介護でよく使う!ADL(日常生活動作)の意味とIADLとのちがい

介護業界やリハビリ業界、医療業界でもよく使われている用語ADL。
普段から使っているけれど、詳しく聞かれるとうまく説明できない…なんてこともありませんか?似たような言葉であるIADLやQOLが出てくると、ますます混乱してしまうこともあるのではないでしょうか。

ADLについてスッキリ理解したい方のために
ADLの定義や評価法、QOLとの関係性、IADLとのちがいについてご紹介します。

ADLとは

ADL(Activities of Daily Living)とは、「日常生活動作」のこと。普段の生活の中で行っている最低限必要な行動です。
食事や排泄、入浴などの日常生活を送る上で必要な、「ベッドや布団から起き上がる」「いすに座る」「食事をする」といった基本的な行動を指します。

しているADLとできるADL

ADLには下記の2つのレベルがあります。

  • ① しているADL
  • ② できるADL

「① しているADL」とは、普段の生活で自然に行えている行動です。
「② できるADL」とは、あるときはできたとしても、日々の生活で行うには介助を要する行動です。たとえば、ひとりで入浴することができた日があったとしても、常にひとりで入浴することはできない場合が該当します。

ADLを評価して、高齢者の日常生活レベルを正しく把握しよう!

ADLは評価をすることができます。
たとえば、排泄が自分で行えるかどうかなどをADLで評価することによって、介護の導入を検討することができます。
また、排泄に介助が必要な場合はどの程度必要なのかをADLで評価することで、ポータブルトイレを置いたり、訪問介護を利用してヘルパーさんにトイレ誘導をしてもらったりと、さまざまな介護の方法の判断基準になります。

ADLの評価法のひとつに、FIMがあります。FIMは「しているADL」を評価の目的としています。FIMでADLを評価することで、対象者の自立度と介護量を数字で把握することができ、他職種との情報共有を正確かつスムーズに行うことができます。
それでは、FIMの採点基準や評価項目をみていきましょう。

FIMの採点基準

それぞれの動作の介助量を1点~7点で評価します。
介助が不要であれば6点~7点です。介助が必要であれば、どの程度の介助を要するのかで点数(1点~5点)が変わります。
評価項目がすべて満点であれば126点、すべて全介助であれば18点となります。

点数 内容
7点:完全自立 補助具や介助なしで適切な時間内に自立して行える。
6点:修正自立 補助具の使用、通常以上の時間が必要、安全性の考慮のどれかが必要である。、

5点:監視、準備 本人の身体には触れない、介助者の指示や準備などの介助が必要である。
4点:最小介助 手で触れる程度の介助が必要。75%以上90%未満自分で行える。
3点:中等度介助 手で触れる以上の介助が必要。50%以上75%未満自分で行える。
2点:最大介助 25%以上50%自分で行える。
1点:全介助 25%未満を自分で行える。

FIMの評価項目

評価項目は全18項目あります。この項目を上記の7段階で評価します。

項目 内容
【セルフケア(6項目)】 ・食事
・整容
・清拭
・更衣上半身
・更衣下半身
・トイレ動作
【排泄コントロール(2項目)】 ・排尿管理
・排便管理
【移乗(3項目)】 ・ベッド、いす、車いす移乗
・トイレ移乗
・浴槽、シャワー移乗
【移動(2項目)】 ・歩行、車いす
・階段
【コミュニケーション(2項目)】 ・理解
・表出
【社会的認知(3項目)】

・社会的交流
・問題解決
・記憶

QOLとの関係性は?

QOL(Quality of Life)とは「生活の質」のことで、人間らしく満足して生活しているかを評価する概念です。
たとえば、寝たきりのままでも、本人の意思が尊重され、満足のいく介護を受けて生活ができれば、本人の自律性を発揮していることになり、QOLの向上につながります。ADLが極めて低い状態だからといって、QOLも低くなるとは限らないのです。

IADLとのちがいは?

IADL(Instrumental activities of daily living)とは、「手段的日常生活動作」のことです。ADLと似ていますが、ADLよりも複雑で高いレベルの行動をいいます。
IADLには、下記の8種類の尺度があります。

【IADLの8種類の尺度】

  • ・電話を使用する能力
  • ・買い物
  • ・食事の準備
  • ・家事
  • ・洗濯
  • ・移送の形式
  • ・自分の服薬管理
  • ・財産取り扱い能力

上記の通り、IADLは毎日必ず行う行動ではありません。そのため、できるけれどやらない場合や、できたとしても常にできるかどうかがわからない場合が、ADLより多いといえます。一概に「できる」「できない」と言い切ることが難しいため、普段からよく観察することが重要になります。
特に、病院や施設にいるとなかなか使用しないIADL。高齢者を要介護者としてとらえるのではなく、生活者としてとらえる上で、IADLは大切な尺度です。IADLを評価することによって、高齢者の在宅での生活をよりリアルに捉えることができると思います。

高齢者の生活をより豊かに

ADLを理解して評価できると、高齢者の身体状況を正しく把握できるようになります。介護計画書などに必要な目標も、本人とって無理のないものにすることができます。ADLやIADLをきちんと理解し、QOLの概念も大切することで、高齢者の生活はより豊かなものになっていくと考えます。

ADLやIADLは「自分で日常生活を送ることができるかどうか」の尺度であるため、介護の必要性に直結する重要なものさしです。「できない」ことに目を向けるのではなく、「できる」ことに目を向けるようにして、高齢者が喜ぶ介護をし、QOLを高めていけるように意識しましょう。

参考サイト
厚生労働省「手段的日常生活活動(IADL)尺度 」(2017年6月9日,https://www.jst.go.jp/s-innova/research/h22theme05/h22theme05_siryo01.pdf)
リハビリ(理学療法・作業療法)の素材集「FIM(機能的自立度評価表)の項目・点数をガッツリ網羅!これさえ読めば安心です。」(2017年6月9日,http://physioapproach.com/blog-entry-488.html)

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